第42回大会 レースレポート

日程 2019.07.27
サーキット 鈴鹿サーキット (三重県)
ライダー 加賀山 就臣 / シルバン・ギュントーリ / 渡辺 一樹
予選 5位
本戦 5位

「ヨシムラのレースは鈴鹿8耐を中心にしてすべてが動いている」
加藤陽平監督が日頃からそう表現する、ヨシムラにとってもっとも大切なレース、鈴鹿8時間耐久ロードレースが今年もやって来た。
チーム体制は、全日本を共に戦う加賀山就臣、渡辺一樹の2人に、昨年も鈴鹿8耐をヨシムラチームで走ったシルバン・ギュントーリの3人。
第1回からヨシムラはこの鈴鹿8耐に参戦。車両を製作するメーカー自らが自分たちの勝利のため総力を挙げて作り込んでくるファクトリーマシン相手に、それを超える速さ、強さを見せ、勝利を挙げてきている。しかしここ2年はファクトリー勢を追うために攻め、転倒という結果でレースを終えてしまっていた。
今年のここ鈴鹿でのレースは、全日本第2戦鈴鹿2&4の第1レースで渡辺が2位表彰台を獲得している。この好結果を得られた仕様をベースに、6月のテストからチームは8耐のロングディスタンスをハイペースで走り切るためのマシンを造り上げていった。
「方向性を見誤ることがないよう、慎重にマシンのセットアップを進めている」と加藤監督はテスト後に同じ言葉を繰り返しておりこのことからも、いかに確実に積み重ねることができるかにチームとしての作業を集中していることがうかがい知ることができた。

今年の8耐のウイークは、水・木に二日間のテストが設定されたことから、通常よりも一日早くスタートすることになった。しかもその初日となる水曜日は、午前中に2時間45分、午後5時間という長時間の走行スケジュールが組まれた。
さらにはこの水曜日には、鈴鹿サーキットのある三重県が梅雨明けとなり、真夏日の中で約7時間のテスト走行が行われたのだった。
着実な積み上げをして作り込まれているマシンに3人で乗り込み、決勝へ向けた準備を進めるチーム。午前中は2’8.381のタイムで総合6位、午後は2’8.103で総合5番手に付けた。
翌木曜日は午後に1時間のセッションが2本のみ。この日は2’8.735で総合7番手となった。
いよいよ金曜日から、本格的なレーススケジュールがスタートし、午前中に2時間のフリー走行がありその後、各ライダー20分の予選セッションが2回行われた。
最初のセッションはシルバンが走り、2’7.226のタイムで4番手となった。次のセッションは加賀山が走り、2’7.372のタイムで4番手。3番目のセッションは渡辺が走行し、2:07.501で7番手。2回目はシルバンが2’8.825で10番手、加賀山2’9.606で11番手、渡辺2’6.965で1位となった。この結果、ヨシムラスズキMOTULレーシングは総合5番手で翌日のトップ10トライアルへ進出した。

この金曜日朝9時に台風6号が発生し、27日は三重地方を通過するという予報が出された。トップ10トライアルがどうなるか、予断を許さない状況となっていった。実際に台風は土曜日に三重県を直撃。このため、土曜午後のフリー走行、トップ10トライアルはすべてキャンセルとなった。この結果、決勝のスターティンググリッドは金曜日の計時予選結果が反映されることになり、ヨシムラは5番手の位置からゴールを目指すことになった。

日曜日は台風も通過し、ドライコンディションでレースをスタートすることができた。
スタートライダーを任されたギュントーリはうまいスタートを切り、オープニングラップを2番手で通過。安定して2位の位置を走り、3周目のシケインで前車を交わし、トップに立つ。
毎年スピードを増している鈴鹿8耐。当然、速さを出すにはガソリンを多く消費するわけで、燃費が悪くなる。しかし速さだけを追求してしまうと燃費が悪化し、その結果としてピットインの回数が多くなってしまい、大きなタイムロスを生じてしまう。上位陣、特にファクトリー勢はこのあたりの判断を最初のスティントでしようとしたらしく、積極的にペースを上げず、周囲の様子を見ているようだ。
対してヨシムラは、前述したように着実な積み上げを全日本、鈴鹿8耐テストの中から行ってきており、その成果をこの決勝で発揮させている。周囲の状況に関係なく、自分たちの持っている力を出し、決勝を走る。その結果が、このファーストスティントではセーフティーカーが導入されるまでの間に後続のファクトリー勢に対して2秒の差を付けるというギュントーリの力強い走りとなって出ていたのだった。
ギュントーリは29周し、3位の位置でピットに戻ってくる。
渡辺にライダー交代し、もう一度トップを追いかけたいところだが、なかなかここでペースが上がらない。マシンに少し問題が出ており、さらには選択したタイヤも路面状況にうまくマッチングせず、渡辺の持つ本来のスピードをうまく発揮できなかった。5番手の位置から上がりたいところだが、なかなかそれができない。その状況は加賀山にライダー交代しても変わらず、トップグループとの差は広がっていく。
そうしてクローズアップされていくのが、4位を走るチームとの戦いだ。昨年の耐久チャンピオンであるF.C.C. TSR Honda Franceと5秒から10秒という僅差での争いになっている。
ジリジリとした戦いが展開され、チームもその差を詰めるべくチャレンジするが、結局その差を覆すことはできず、5位でチェッカーとなった。

加藤陽平 監督コメント

今回のレースウイークには前回テストの情報を基にセッティング面の見直しを行いレースウイークにマシンを持ち込んできました。初日、2日目のフリー走行も慎重に評価を進め、マシンセッティングや燃費の確認を進めてきました。
予選ではクリアラップが取れないなど多少の不利は有りましたが、3名のライダーのベストタイムが揃い、決勝に臨むにあたり良い状態を作ることが出来たと考えています。
決勝レースファーストスティントではギュントーリ選手が非常に良いペースでスティント終盤までレースをリードしてくれました。非常に良いレースへの入りでした。
チームからの指示としてポジションや他チームのペースに関わらず、自身が出来る最大のペースで走って欲しいということを全ライダーに伝えており、勿論競り合いの時は後ろに着くように指示をすると同時に自分のペースで後続を引き離せるようであれば、前に出ても構わないと言う指示をしていました。その上で、中盤以降に勝負できる位置にいれば、そこからチームとしての作戦を考えようとしていました。その中で燃費も達成出来ていましたし、細かいところでのミスはいくつかありましたが、決勝中にチームとして大きなミスはありませんでした。
中盤以降、3メーカーのファクトリー勢が徐々に本来のスピードで走り出した際にそのペースに付いていけず、TSRチームと4位争いになり、ピット作業も練習の通りに出来ずに前車に対し着いたり離れたりの膠着状態となりました。
状況を打破する為に、ピット作業に於けるルーティン作業を端折ってみたりしましたが、作業中にミスが出たりして、実際にそこで差を詰めることは出来ませんでした。
過去2年、自分たちは転倒で勝負する土俵に上がれなかったのですが、それに対して今年は実力を反映した着実なレースは出来ましたが、上位3台に対しては大きな差を見せつけられた格好です。
5位フィニッシュ、この差を埋めるのは簡単では有りませんが、スズキの代表として来期はこの戦いに加わると言う強い気持ちをもって戦います。
色々な側面でベースUPが必要ですが、ファンの皆さんの応援を力に変えて達成して行きたいと思います。
今年の鈴鹿8耐も沢山のファンの皆様にご声援頂き、誠に有難うございました。
また今日から、来年に向けた取り組みがスタートです。
来年もファンの皆さん熱くさせる8耐に出来る様に、チーム一丸となって取り組みますので、引続き応援宜しくお願い致します。
最後になりますが、出来る限りの力を発揮してくれたライダー3名には感謝したいと思います。「ありがとう!」

加賀山就臣 選手コメント

大まかなところは事前テストで決まっていたので、最後の2項目くらいの確認と、決勝に向けたタイヤの2チョイスくらいを決めるという作業を水曜、木曜に3人で行っていました。やはり上位2チーム、ホンダとヤマハに対しては差があったので、どうやってそれを詰めるかということで作業を進めました。
大雨のせいなのか、レースウィークに入って本当に路面のグリップが悪くて、事前テストから1秒くらいアベレージが悪くて、1人で走っていたら、かなり焦っていたかもしれないですね。でも周りを見たらみんな辛そうだったので、同じだから仕方がないかと割り切ることと切り替えることができました。このウィークは路面コンディションがとにかく悪くてグリップが出ず、みんな苦しんでいましたが、なんとか3人でマシンをセットアップしていきました。予選のチーム3人の走りを見ると、バックマーカーを処理しながらの走行で、3人ともコンマ3~4秒の差の中に入っていて、3人のセクタータイムを合わせるとちょうど2分6秒後半くらい、それぞれの良いタイムを足していくと6秒台だったので、みんながそれなりに攻められるバイクに仕上がったと思います。ただ、予選が終わった時点で上位2チームとの差はあったので、それをどうやってチームワークで詰めようか、というところでした。
決勝はギュントーリ選手が第1スティント頑張ってくれて、第2スティントから、ファクトリー勢がペースを上げていって、それに対して少しずつ遅れていった、という展開になりました。実際我々はノーミスに近い状態ではあったと思います。ただ、バイクの方にリアブレーキが使えなくなるというマイナートラブルが出てしまって、リアブレーキをよく使う自分と渡辺選手の2人は、そこで苦しんで、トータルで数十秒はロスしてしまったと思います。
結果的に5位。TSRチームとはその差が5秒から10秒で行ったり来たりしていたけれど、最後まで追い付けなかったですね。現状は、それが自分たちの実力。それはまず認めないといけないと思います。でもヨシムラファクトリー(自分はそう言っているのだけれど)に帰ってきて8耐を無事に完走したということで、胸を張って5位を受け止めて、また来年に挑みたいと思います。スズキを応援してくれたファンには感謝しかありません。レースの方は最後に大荒れで、ラスト5分大変だったけど、来年は優勝目指せるよう今日から再出発します。

シルバン・ギュントーリ 選手コメント

最初のスティントではうまくスタートで飛び出すことができ、レースをリードすることができました。カワサキ・ヤマハ・ホンダファクトリー勢相手に戦い、その前で走ることができ、チーム、そして自分の速さを見せることができたので、自分を呼んでくれたヨシムラスズキに対してしっかり仕事ができたと思います。昨年は表彰台をかけて接近戦を展開中、序盤にバックマーカーとの接触で転倒してしまいました。いくら良い位置を走っていても、転倒でレースを終えてしまうとリザルトが残りません。そのために、今年は速さを追求しつつ、できるだけリスクを冒さず、着実なレースをするようにチームから指示がありましたし、自分自身もそれを心がけました。そのような中でファクトリー勢の前を何周にも渡って走れたので、存在感を示せたと思いますし、自分も非常に満足しています。特にレースを有利に展開するため、この最初のスティントはとても重要だと考えていたので、ストレートスピードを稼ぎライバル勢からアドバンテージを広げ、130Rはできる限り高速でアタックし、ファクトリー勢から2秒のリードを広げることができました。
もちろん目標としていた表彰台には届かず、最終的にはファクトリーチームと大きな差ができてしまい残念な思いはありましたが、今年は素晴らしいレースになりましたし、とても楽しいレースウイークでした。
応援をしてくれたファンの皆さん、そしてチームの皆とチームメイト2人に感謝したいと思います。

渡辺 一樹 選手コメント

例年よりレースウイークが1日長く、初日に走行時間が7時間あったので、いくつかセットアップを試して長いレースウイークは有効に使えました。事前テストから比べると路面温度もグリップも変わって、最初はビックリしましたが、ライバルたちもタイムを大きく落としていたので、慌てず作業をこなせました。
タイヤチョイスと最終的な調整をして、フリー走行と予選を進めていく中、1回目の予選ではもう少しタイムを出したかったのですが、チョイスしたタイヤが合わず、2本目に変更した組み合わせでタイムが上がったので、そこはうまくできたと思います。ただ台風で土曜日のトップ10がなくなったのは寂しかったですね。僕はどちらかというと耐久よりもスプリント寄りなので、残念でしたが、安全上の問題もあり中止は良い判断だったと思います。
決勝に関しては「悔しい」の一言です。チームとしては力を出し切り、地の力を出した状態で、この順位が付いているので、力の差を見せつけられ、まだまだ足りないと感じました。ただ裏を返せば自分たちの実力を把握し、次なにするの?どの方向に進むの?というのが明確になりました。まずは細かいことの積み重ねとそのペースを上げていかないとファクトリー勢との差を詰めることは難しく、それができないと力勝負にならないので、次に向けて始めないといけないですね。
今回かなりファクトリー勢の影に隠れていたので、展開的にギュントーリ選手がトップを走ってくれて、ちょっとホッとしたというか、ヨシムラのマシンがファクトリー勢の前を走ってくれて良かったです。自分の最初のスティントでは、走行ギリギリまでタイヤチョイスに悩み、28周というディスタンスを後半もタイムを落とさずに走ろうと、最終的に他のライダー2人とは違うハード側を選びました。チームがライダーの判断で行かせてくれたのですが、思うようにグリップが取れず、ペースを上げられなかった点で判断ミスと感じています。次のスティントは2人と同じタイヤを履きペースを上げられたので、もったいなかったというのと、修正できて良かった、という気持ちです。展開としてはファクトリーとの差は離れてしまいましたが、TSRに対してはペースを上げられれば最終的に追い付く可能性があったので、そのミスがなければと残念な思いです。
マシンに関してはリアブレーキが効きにくいと言う症状が出てしまいました。セットアップ的に少しフロント荷重になるので、リアブレーキをよく使っていたのですが、それが決勝で使えなくなり、プラスタイヤチョイスのミスで、自分の最初のスティントは大変でした。
今後は自分たちになにが足りないのかよく精査し、すぐにもてぎのスプリントレースがあるので、耐久で勉強になった部分・課題を解決しながらスプリントへのスピードに繋げて、それを来年の8耐にも繋げていけるよう、しっかり積み上げていきたいと思います。


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