ヨシムラ SERT Motul、EWCポイントリーダーとして挑む鈴鹿8耐

ヨシムラSERT Motulは、ヨシムラのホームラウンドである2024年FIM耐久世界選手権(EWC)第3戦 鈴鹿8時間耐久ロードレースに向けて新たなレース戦略を強いられる事になった。

まずは第45回の鈴鹿8時間耐久レースに向けて、6月19日〜20日の2日間、鈴鹿サーキットで事前テストが行われた。順調にセッションを重ねてレースに向けてのセットアップを詰めていこうとしていた時、チームの主力であるグレッグ・ブラック選手が転倒。骨折を伴う怪我を負ってしまい、1ヶ月後に開催の第3戦の離脱を余儀なくされてしまった。レースに向けて、現時点ではチームメイトのダン・リンフット選手と渥美 心選手の2名がヨシムラSERT Motulでの登録となっており、エティエンヌ・マッソン選手はチームスズキCNチャレンジのライダーとして、エクスペリメンタルクラスにて参戦が決まっている。

ヨシムラSERT MotulはEWC開幕戦のルマン24時間で優勝を果たし、ライバルと9ポイント差で第2戦スパ8時間に挑んだ。そこでも堅実かつ安定した走りで2位表彰台を獲得。総合88ポイントにて後を追うライバルとの差は1ポイントに縮められたが、世界耐久選手権のポイントリーダーとして高い士気を持って鈴鹿8耐に挑む。

6月に開催された第2戦スパ8時間でのレースと直後に行われた鈴鹿での事前テストを終え、ライダーたちが語った。

グレッグ・ブラック

まずは第2戦のスパ8時間を振り返ると、チームは常にレースに勝つために挑んでいるので2位という結果となってしまったのは残念だったよ。でも僕たちにはシリーズチャンピオンという大きな目標があるので、この位置でレースを終えられたのは良かったと思う。

スパでの戦略は燃費重視で、ライバルのYARTよりもピットストップを少なくする事だった。実際に彼らより1回少ないピットインで8時間を戦い抜くことができたけど、これはヨシムラSERT Motulの全員がいい仕事をした証だと思うよ。チェッカーまで誰一人もミスがなかった事は誇りに思うべきだし、素晴らしいレースだったって言えるね。

その10日後には次戦に向けた鈴鹿テストのために日本に向かったよ。2日間に渡って行われた走行はコンディションに恵まれて、チームは鈴鹿の決勝に向けてセットアップを行う重要なテストを行なったんだ。チームは路面や気温が高くても低くても安定した走りで順調にテストができていたけど、そんな時に思いもかけず転倒で怪我をしてしまって、本当に残念に思っている。

アウトラップの1周目、鈴鹿8耐に向けた日本仕様の中古タイヤを履いて出て行った時で、最初の左コーナーでの転倒だった。怪我をした事はもちろんだけれど、このタイミングで転倒してしまったことにすごく動揺したよ。

この転倒で左手首を脱臼して3カ所も骨折してしまったので、日本滞在中に最初は脱臼した部分を戻す手術、その数日後に骨を固定する手術と2回も手術を受ける事になったよ。

フランスに戻ってからすぐに外科医に診てもらったけど、無事に手術が行われていたとお墨付きをもらって、日本人医師はいい仕事をしたと言ってもらえたよ!

骨を固定したピンを外すまで5週間かかるけれど、それから理学療法士の治療を受けながらリハビリしていくよ。幸か不幸かボルドールまでは約3ヶ月あるので、鈴鹿を走れない事は本当に残念だけれど焦らず治療に専念するよ。

ダン・リンフット

シーズン2戦目のスパでは8時間のレースを終えて、ライバルからわずか40秒差という僅差で2位になったよ。

価値のある戦略でレースそのものは順調に進んで、YARTより1度ピットストップを少なくする事ができたけれど、結果としては十分ではなかったね。レース中盤は路面温度が上がってちょっとだけ苦しい展開だったけれど、自分のスティントでのパフォーマンスは満足できる内容だったよ。優勝には届かなかったけれど、しっかりポイントを獲得してランキング首位で第2戦を終えられた。その事に対してどう感情を表したら良いか奇妙な感覚になったよ。2位は素晴らしい結果なのに、喜びきれない、、、やっぱり優勝したかったよね。

その直後に鈴鹿に向けて準備をスタートしたけれど、また日本でレースができる事を嬉しく思っているよ。2023年はオートレース宇部レーシングチームから参戦して、タクヤと2人体制で総合4位フィニッシュしたので、鈴鹿には良い思い出があるんだ。

このテストはとても重要で、今回の目的はセッティングを詰めてレースペースを安定させる事だった。実は初日の夜に体調を崩して走れないセッションもあったけれど、最後のセッションでは万全の状態で走れて、僕はベストラップを1秒更新する事ができたよ。でもグレッグが転倒し、怪我で走れなくなってしまった事は本当に残念だよ。

鈴鹿8耐まで後数週間だけど、マシンのフィーリングも良いし、しっかりとパフォーマンスを発揮できると自信は持っているよ。今の時点ではライダー戦略がどうなるのか、ココロと僕の2人の体制か、もしくは3人になるのか分からない。何れにしても僕は準備万端だし、ココロも同じ筈で、僕たち2人とも昨年は2名体制で鈴鹿8耐を走りきったから心配ないよ。 日本へ行くまでの残りの日々は、鈴鹿での暑さに備えてトレーニングに励んでいる。ちょうどイギリスでも異常な猛暑と言われているので、積極的にサイクリングを行ったり、健康で怪我のない身体作りのために筋力トレーニングや有酸素運動も行っているので、後は全ての成果を日本で発揮させるだけだね。

渥美 心

今年の鈴鹿8耐にヨシムラSERT Motulからの参戦が決まり、とても嬉しく思っています。今までも日本でのテストや全日本のスポット参戦、EWCでのリザーブライダーとしてチームで走る事はありましたが、チームの一員として耐久レースに参戦するのは初となるので、チーム内のルールを覚えたり、皆に上手く溶け込める様に、事前テストでは走行以外の部分でも時間を有効に使いました。テストそのもの自体は乗り始めから良いフィーリングで、セットアップも全体的に向上させる事ができ、夏場の自己ベストを更新する事ができました。このタイムは今年の全日本参戦時に出した自己ベストからはプラス0.7秒になりますが、燃費を重視した耐久マシンで路面温度も全く違うので、悪くないと思います。

レースウィークの頃は梅雨が明けて更に高温多湿になるので、マシンもライダーもそのコンディションに適応させる事が重要になりますね。でも現場で良いフィーリングを掴めているので、しっかりタイムを出していく自信はあります。

このテストで試した様々なセッティングで色々な見極めもできたので、レースウィーク中に更に詰めて行く準備が整いました。鈴鹿で使うブリヂストンタイヤは、ヨーロッパのEWC戦で使用するものよりも硬いのですが、自分は日本で何度も使っているので、その経験を活かしてマシンをより良い方向に持っていきたいと思います。

本当にいよいよ鈴鹿というタイミングになり、EWCのチャンピオンシップを戦うヨシムラSERT Motulから参戦する事にプレッシャーも感じますが、結果を残す事は十分可能なパッケージという事をわかっているので、とても楽しみです。

グレッグとはチームメイトとして一緒にレースができるチャンスだったので、怪我で欠場となってしまった事は本当に残念です。この後にチームがどの様な戦略でウィークを迎えるのか分かりませんが、もし体力的にも厳しい2名体制で挑む事になったとしても、ダンとは力を合わせて上手くやっていけると思います。 鈴鹿は自分が一番好きなサーキットで、子供の頃から家族とレース観戦に来たり、レースを始めてから15年以上も走り込んでいる場所です。ここでチャンピオンシップのポイントリーダーとして参戦する鈴鹿8耐がとても楽しみですし、チームのタイトル獲得に向けてベストを尽くします。

エティエンヌ・マッソン

スパを振り返えると、2位表彰台という結果でみえるほど簡単なレースではなかったね。グリップやトラクション向上のためウィーク中に様々な作業をして、予選の時は良いセットアップで満足いく走りができていたけれど、決勝は路面温度が上がって苦しんだよ。優勝争いのために最後までプッシュし続けたけれど十分に戦いきれなかった。もちろん2位も喜ぶべきポジションだし、チャンピオンシップをリードしている事には満足しているけれど、常にトップを目指したいよ。

鈴鹿テストの前に、スズキから今年の鈴鹿8耐に参戦する『チームスズキCNチャレンジ』のライダーに選ばれたという知らせを受けたんだ。サステナブルな燃料やタイヤを使ったエクスペリメンタルクラスという新しいカテゴリーでの参戦なので、チャンピオンシップポイントは獲得できないけれど、メーカーが取り組む新たなチャレンジの一員になれて光栄に思っているよ。

鈴鹿でのテストはとても有意義だった。マシンをテストする時間もたっぷりあったし、チームの皆と過ごして良い2日間だったね。マシンはヨシムラSERT MotulのGSX-R1000Rとは少し違っていて、特に出力やタイヤに差を感じたね。タイヤライフの管理は重要で、チーム全体でタイヤの寿命を延ばしていく方法を見つけようと努力しているんだ。チームのクルーはMotoGPを始めとしたレースやテストチームでの経験があるスタッフも多く、走行後のコメントから必要なセットアップ等をしっかり行ってくれた。このスズキのマシンと社員で構成されたチームの皆とのチャレンジを楽しみにしているし、この取り組みに対して最高の結果を出したいと思っているよ。 グレッグの転倒に関しては、本当に気の毒としか言えない。彼は僕にとって兄弟の様な存在なので、別のチームであっても一緒に鈴鹿に参戦する事を楽しみにしていた。僕はヨシムラSERT MotulもチームスズキCNチャレンジも全面的に信頼をしているので、スズキファミリーとして一丸となって鈴鹿8耐を戦うよ。

2024年FIM世界耐久選手権第3戦、第45回コカ・コーラ鈴鹿8時間レースは7月19日から21日にかけて三重県の鈴鹿サーキットで開催される。

レースウイークは19日(金)8時30分のフリー走行に始まり、予選1回目と2回目が行われる。翌20日(土)には予選から上位10チームがTOP10 TRIALに進出し、グリッド獲得の争いをする。

決勝レースは21日(日)11時30分にスタートし、トップチェッカーを目指した8時間の耐久レースが行われる。


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