ヨシムラ SERT Motul、最終戦ボルドールでチャンピオン獲得に挑む!

ヨシムラSERT Motulは、フランス・マルセイユ近郊のポール・リカール・サーキットで開催される2024年FIM世界耐久選手権最終戦、ボルドールでのタイトル奪還に闘志を燃やしている。

鈴鹿で開催された第3戦、チームはヨシムラのホームである事でのリソースを最大限に活用し、ライダーやクルーを通常ラインナップから変更しながらも3位入賞を果たし、イギリス人のレギュラーライダー、ダン・リンフット選手、開発ライダーの渥美心選手、そしてMoto2参戦中のスペイン人、アルベルト・アレナス選手は、表彰台から地元ファンに笑顔とガッツポーズを届けた。

この決勝3位、予選5番手という結果により、ヨシムラSERT Motulは鈴鹿で貴重な22ポイントを獲得。シリーズ戦では2番手に後退したものの、ライバルをわずか6ポイントの差で追っている。

最終戦ボルドールは怪我から復帰するグレッグ・ブラック選手、鈴鹿8耐にはTeam SUZUKI CN CHALLENGEに出向し素晴らしい走りで総合8位フィニッシュに貢献したエティエンヌ・マッソン選手と、これまでシリーズ全3戦にヨシムラSERT Motulより参戦し、全戦でトップ3入賞を果たしている唯一のライダー、ダン・リンフット選手の3名でチームが構成される。

また鈴鹿8耐でスタートとフィニッシュを含めた4スティントで見事な走りをみせ、チームの表彰台獲得に貢献した渥美心選手は、最終戦でのリザーブライダーという役割を担う。

シーズン残り1戦を控え、ライダーたちが鈴鹿での振り返りやシリーズチャンピオン獲得に向けての思いを語った。

ダン・リンフット

グレッグが怪我で走れなくなったことで、ライダー戦略がどうなるのか分からない中、鈴鹿で表彰台を獲得できたことは素晴らしい思い出になったよ!アルベルトは急な参戦で公式セッション前のテストに参加できなくて、当初はレースでの起用はない予定だったんだ。でもココロの2回目のスティントが終わった後、1スティント受け持ってくれたことで、僕たちは次の走行まで少し長めに体力回復時間を取れて、ありがたかったよ。

僕のスティントでは、これといったトラブルは無く、とにかく周回遅れのライダーのパッシングやラインが交差するような場所でリスクを冒さない様に心掛けたよ。給油時の小さなミスでライドスルーペナルティーを受けたけど、チームの戦略や皆の集中力で表彰台に上がることができたんだ。鈴鹿はワイルドカードで参戦するファクトリーチームやサーキットを熟知している地元チーム・ライダーが沢山いる中、あの暑さで難しいコンディションにも関わらずパフォーマンスを発揮できたことを誇りに思うし、結果に満足しているよ。

レース後いったんイギリスの自宅に戻ったけれど、その後にフランスのグレッグの家に滞在したんだ。ちょうど彼の「2Ride」イベントがあったけど、グレッグはまだ怪我が完全に治っていないし、彼のビジネスパートナーも都合が悪いタイミングで、僕が代わりにライダーとして参加したんだよ。2Rideは、お客さんをレーサーでタンデムしてサーキット走行の体験をさせるっていう内容だけれど、後ろに人を乗せる事でいつもと違う走りになってスズキGSX-R1000Rでのライディングで新たな発見もあったし、僕自身楽しく過ごしたよ。それ以外の時間はトレーニングをしたり、サイクリングをしたり、家族と過ごしたりであっという間の日々だね。

今シーズンの話をすると、4レース中3レースを良い形で終えているので、ボルドールでも満足する結果を残したいと高いモチベーションで最終戦に向かうよ。ポール・リカールは、恐らく僕の世界耐久戦で一番多く経験のあるトラックで、2022年は2位獲得もしているからサーキット自体も現地のコンディションもよく分かっているつもりだよ。だからレースウィークのテストでどれだけチームのマシンであわせていけるかが重要になるよね。

ボルドールでは、レギュラーライダーでの戦いに戻るけれど、昨年の実績を見てもチームのパッケージは強いことが証明できている。今回は夜間走行も楽しみだし、この最終戦の24時間レースがクリーンなレースでチェッカーまで進むことを願っているよ。とにかく重要な週末になるけれど、今から楽しみだよ!

グレッグ・ブラック

事前テストで手首を骨折し、残念ながら今年の鈴鹿は欠場となってしまったけれど、レースウィークを含めてチームとは常に連絡を取りあっていたよ。セッティングやレースプランなどについてもずっとコミュニケーションをとっていたし、十分な情報交換ができていたんだ。だから日本でのレースが上手く運んで本当に嬉しく思ったよ。皆が完璧な仕事をこなし、しっかりとチャンピオンシップポイントを獲得してくれたし、ココロが地元の観衆の前で素晴らしいスタートをしてチェッカーフラッグを受けられたのも良かったね。あと印象に残っているのは、映像で観た自分の原寸大写真かな。あれは嬉しかったし、びっくりしたよ!

怪我の方は順調に回復していて、8月1日に骨を固定していたピンを抜いた後、理学療法を中心としたリハビリを行っていて、状態はかなり良くなっているよ。今すぐにでもライディングできそうだけれど、100%完治させたいから9月上旬にGSX-R1000Rでサーキット走行をする機会まで我慢しているんだ。あの鈴鹿での転倒から一度もバイクを走らせていないから、とにかく楽しみにしているよ。

8月上旬には、ダンがフランスに来てくれて一緒にトレーニングをして楽しく過ごしたよ。僕が行っている「2Ride Bapteme Moto Experience」というイベントでは、怪我をしている僕の代わりにライダーとして手伝ってくれたことも感謝している。ダン自身もタンデムで速く走ることで新たな発見があったって言ってたから、良い経験になったと思うよ。

ボルドールのことは常に頭の片隅にあって、鈴鹿の前から最終戦に向けて焦点をあてていたから、可能な限り万全な準備で挑みたいといつも思っている。セッティング、戦略、レースウィークを迎えるための心の準備と、さまざまな側面で準備を進めていくよ。

最終戦前はプライベートテストがないので、ダン、エティエンヌ、僕のレギュラーライダーと、リザーブライダーとして一緒に戦うココロも、レースウィーク中のテストが全てとなる。

僕たちがポール・リカールで強いことは実証済みで、このトラックとレイアウトは僕らのマシンに合っていて、コース上では良いリズムで気持ちよく走ることができるんだ。でも課題もあるしライバルも強いので、最後まで気を抜かずに戦うよ。とにかく今はまたチームと一緒に挑む最終戦を楽しみにしている。

僕たちの目標は明確で、チャンピオンタイトルを奪還する事。そのための力量はあるのだから、それを実現させるだけなんだ。いつも通り運も味方につけなくてはいけないけれど、チームのパフォーマンスとしては十分にタイトル獲得のチャンスがあると思っているよ。

エティエンヌ・マッソン

今年の鈴鹿は、スズキファクトリーチーム「Team SUZUKI CN CHALLENGE」の一員として参戦したので、いつもチャンピオンシップとして戦っている自分としては、例年と明らかに違うレースになったけれど、6月に初めてこのスズキチームの皆とテストをして、互いの信頼関係も感じられ、すばらしい経験をすることができたと思っているよ。

チームのGSX-R1000Rは、僕らがいつも乗っているEWCマシンと似ていたけれど、バイオ燃料、再生資源を使ったタイヤ、環境に配慮した材質のブレーキなどを使用しているため、マシンのフィーリングは違うものになったんだ。だから自分のライディングスタイルを変えてアジャストする必要があったよ。Team SUZUKI CN CHALLENGEのマシンは、まだ開発が始まったばかりだけれど、鈴鹿であれだけのポテンシャルをみせることができたので、技術陣たちは今後の方向性を見出しているだろうね。

プロジェクト・リーダーの佐原さんから最初にこのプロジェクトへの参加で声を掛けられたとき、ヨシムラSERT Motulのポテンシャルと今シーズン毎戦行ってきた優勝争いの事を考えて、かなり躊躇したよ。でも佐原さんは自分を信頼して何度も相談してきたので、このチャレンジを一緒に行うことにしたんだ。もちろんこの特別なチームから参戦したことに後悔なんてまったく無いよ。

鈴鹿の後、自分は家族と一緒にギリシャのクレタ島で1週間の休暇を楽しんだよ。だけどその後すぐに、今シーズンで最も重要な最終戦ボルドールの準備に戻って、トレーニングを再開したよ。

またチャンピオンシップのチームに戻って、グレッグ、ダン、ココロ、そしてクルーのみんなとタイトルを獲る準備はできている。ポール・リカールは大好きなサーキットのひとつで、とても美しいし、たくさんの良い思い出があるから、今からウィークが待ち遠しいよ。トップチームとの差はわずか6ポイントで、チャンピオン奪還のプレッシャーは感じるだろうけど、昨年僕たちは優勝しているし、マシンも競争力があるので、いいプレッシャーと緊張を感じて過ごせるだろう。僕はもともと冷静だし、自分のライディングに集中し、それを楽しむだけだね。 いつもサーキットに戻って、最初のセッションの1周目を走るのが一番楽しみなんだ。昨年もヨシムラSERT MotulのGSX-R1000Rは速かったけれど、マシンが改良されて今シーズンは各コースでタイムを削っているから、ポール・リカールでも今年はどんな走りができるか今からワクワクしているよ。

渥美 心

チームでは開発兼リザーブライダーという立場なので、今年の鈴鹿8耐にライダーとして参戦できたことは本当に嬉しかったです。チャンピオンシップとしては2番手に1ポイント差でリードしていたのでプレッシャーはありましたが、チームのレースでの流れや自分の仕事を理解していたので、とにかくミスはしない様に集中して走りました。

グレッグの欠場で、ダンか僕のどちらかがスタートライダーになることが分かっていたので、良いスタートとペースを築けるように事前トレーニングでも準備しておきました。結果として4スティントを走ることになりましたが、最初の3スティントは鈴鹿8耐ならではの暑さで難しいコンディションでしたが、最後のスティントでは気温が下がり最大限のプッシュができました。

レース中、当初の戦略から変更があり、アルベルトが中盤の1スティントを受け持ってくれたので、僕がチェッカーを受けることになったのですが、3位争いをしているチームはピットストップの回数が自分たちより多くなるので3位に上がれることは想定していました。でも、その後ライドスルーペナルティーを受けたことで、3位争いのマージンが減ってしまい表彰台が不透明になってしまいました。僕にできることはとにかく攻めることだと思っていましたが、チャンピオンシップを考えて3位を獲得したいけれど、転んだら最悪だと思いながらの走りでした。ライバルチームが最後のピットインを終えてコース上で3位争いが始まった時は、冷静に判断をして周回を重ねました。そのライダーを抜いてからもプッシュし続け、20秒ぐらいのマージンを作れた時にやっと気持ちも落ち着き、徐々にペースを落としました。8時間を迎えたころ、最終コーナーに近づくにつれて雰囲気が変わってきたので、これでチェッカーだと分かりました。ホッとしたのと同時に、長い間応援してくれている家族やファンの前で、ついに鈴鹿で表彰台という素晴らしい結果を出すことができて、みんなが喜んでくれると思うと自分も嬉しさが爆発しました!

最終戦のボルドールではレギュラーライダーが戻ってくるので、この様な経験をすることはないのですが、自分の役割をしっかり行ってチームの力になりたいです。リザーブライダーも予選を通過しなければならないので、しっかりタイムを出したり、決勝に向けての確認作業等を行っていきます。今回の24時間レースでも僕は眠らずにチームに協力できることを行ったり、ライダーやクルーの状況を見守ったりしますが、これができるのもリザーブライダーの特権なので、レースから学んだことを自分の今後のレースに役立てたいです。

チームの目標はレースに勝つこと、そして世界耐久チャンピオンになることです。その目標のために開幕前からいろいろな取り組みを行ってきました。残念ながら鈴鹿ではポイントリーダーという立場を失ってしまいましたが、ライバルとの差はたった6ポイントだけなので、チーム一丸となって戦って最終戦での逆転を目指します!

アルベルト・アレナス

ヨシムラSERT Motulから鈴鹿8耐参戦の依頼を受けてとても驚いたし、とにかくワクワクしたんだ!ライダーなら誰でも一度はこのレースに出たいと思っているだろうから、チームから声がかかった事を誇りに思ったし、このチャンスを楽しみたいと思ったよ。

今回は急な参戦の話で、ちょっと準備が大変だったよ。日本への到着も希望の日程で調整できなくて、レース前のテストに間に合わなかったんだ。でも水曜日の夜に鈴鹿に到着してから、すぐにチームの皆と打ち解けられたし、僕自身は集中して自分の仕事に全力を注いだよ。

初めて乗った耐久マシンはとても良いバイクだった。チームメイトやクルーたちみんなから適切な指示をもらったし、僕が早く順応できる様にみんなが助けてくれたんだ。マシンの事、タイヤの事、燃料マネージメントの事、路面温度が高い時のタイヤグリップの事、その他いろいろな事を理解しなくてはいけなかったけど、全てがスムースでヨシムラSERT Motulからの参戦は素晴らしい経験になったよ。クルー全員との関係も最初からとても良かったね。

僕の立ち位置は明確で、チームがとても重要な鈴鹿のレースで耐久レースに出場したことのないライダーを起用してリスクを冒すつもりはないっていう事は分かっていたし、それは常識的だって理解はしていたんだ。もちろん二輪レーサーとしてコースに出て走りたい気持ちはあったけど、僕の役目はチームをサポートすることだったから、そのために全力を注いだよ。僕自身、どんなことができるか証明できるものもなかったから、チームの判断に対して前向きでいたんだ。そうしたら決勝でのスティントを任されることになって、チームが最高の結果を得るための手助けができたんだ。本当に嬉しかったし、誰かの代役として走るといってもスプリントレースで走るのではなく、今回の様にチームに所属して皆で結果を作れたことは自分にとって良い経験になったよ。

今年の特別な夏が終わって、今はMoto2の後半戦に集中しないといけないけれど、本当に耐久レースの参戦は楽しめたよ。 ボルドールを前にして、、、僕自身もチームの事を思ってドキドキしているよ。もちろん鈴鹿の参戦前から彼らがチャンピオン奪還を目指していることを知っていたし、数日一緒に過ごしただけだけど、僕もチームの一員になれた気がしている。最終戦ではチームの皆が強いパフォーマンスで目標達成することを願っているし、心から応援しているよ!

2024年FIM世界耐久選手権のチャンピオンタイトルは、シリーズ戦第4戦・最終戦のボルドールで争われる。

この24時間の耐久レースは9月14日(土)から15日(日)にかけて、フランスのマルセイユ近郊、ヴァール県ル・カステレのポール・リカール・サーキットで開催される。


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